桧 ヒノキ |
桧は、木肌が黄白色の針葉樹、日本の代表の建築用材です。
新築の和室の桧柱をなでて下さい。
大工さんが台鉋(ダイガンナ)で仕上げた肌触りです。
本当は、多分「超仕上」という大工さんの手業(テワザ)に近い
機械鉋仕上が主流なのですが、
それはさておき、その滑らかさが、木が密実なことの証明です。
その面は、塗装もしていないのにツヤツヤしています。
古来より、桧が良材として認知されているのは、
その程よい、密実さと、素性の良さです。
プロは、尾州(ビシュウ-木曽)・吉野(ヨシノ-奈良)などと、
良材の産地の名前のみで呼んだりします。
写真上 ― 上質な一等の通柱
写真下 ― 無節(ムジ)の縁甲板[写真はツキ板]
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杉 スギ |
杉は、桧より、やわらかく、
赤味(アカミ)と白太(シラタ)の対比が美しい木です。
杉と桧の良さの違いは、焼き物で比喩すると、
杉は楽焼、桧は有田の白い磁器という感じでしょうか。
木によって、
赤味が、ピンクがかったきれいな色の場合と、赤黒い場合があります。
写真上 ― 屋根野地板
中央上に死節(シニブシ)[伐採前から
枯れていた枝の根元の節で
押すとポコンと外れてしまう]が見える。
写真中 ― 無節(ムジ)の化粧野地板
赤味と白太の対比がきれい
杉のこのような板材の品質を「源平」という。
源氏の白旗、平家の赤旗に由来すると思われる。
「源平」は和室の天井板としては
あまり好まれない。
新築時、赤白のグラフィカルなパターンが
出来てしまい、本来、
和の空間のワキ役である天井が
目立ってしまうためだ。
最も上質な[節がなく、木目も一様で詰んでいる]
杉の赤味のみでできた材を「赤杉」とよび、
数奇屋・茶室の普請に好んで用いられる。
写真下 ― 秋田杉中杢天井板
秋田杉の大径木を、
巾360~390の板に製材する。
中央部分は杢目、
端へ近づくにつれ、きれいな柾目の板が出来る。
このような木目を、「中杢」という。
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松 マツ |
日本の松を指します。
特に外国のものと区別して、地松(ジマツ)という場合もあります。
建築では、一般に中小径木を、構造材として用います。
材の性(しょう)が強く、強度はありますが、ヤニ気があり、
ソリやネジレもよくおこします。
銘木として、ヤニ気が多く独特のつやの持つものを、肥松(コエマツ)と呼び、
床(トコ)廻りの板材や、高級床板材として用います。
写真 ― 松の梁 松は、幹の同じ高さの位置から
四方八方に枝を出す。
その様子が、木目にちゃんと現れている。
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欅 ケヤキ |
日本産の広葉樹、堅くて性の強い木。
古来より、神社仏閣にも用いられ、
民家では、上等な普請の、大黒柱等の主要な柱・上框・
丁物[差鴨居というのが主流か?4枚建て障子等の開口の上の、見付巾の広い鴨居]
等の部材に用いる。
床の間の地板や、違い棚にも用いる。
そのような場合は、突キ板にロウ引きという塗装をかけてあるものが多い。
写真上 ― 上框 ケヤキの色合いは木によって色々
広葉樹の特徴である導管が、
ツブツブとよく表れている
写真下 ― 上框 ケヤキの色合いは木によって色々
これはちょっと黒っぽい。
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米松 ベイマツ |
カナダ・アメリカ産の松。直径30cmから1m位までの原木があります。
大径木の上質なものは、ピーラと呼ばれ、
年輪間隔が1mm前後でとてもきれいです。
針葉樹としては、堅いほうですが、ヤニツボ、ヤニが多い。
特別なヤニツボがなくても、
木の表面からツブツブとヤニが噴き出してくることがあります。
木が硬いわりには、腐朽しやすいので、
外部の雨がかり部分には用いないほうがよいと思います。
ウッドデッキを作ったら、7~8年で腐ってしまいました。
もちろんキシラデコール
[ドイツ製の着色防腐塗料‐日本では武田薬品から出ている]
は塗っておいたのですが。
中大径木の挽割材は、
構造材・下地材・造作材オールラウンドに用いますが、
直径30cm前後の木は、
ソリネジレがある場合があるので、構造材での使用が主になります。
写真上 ― 中細目の構造材 板目
写真中 ― ピーラの無節(ムジ)の化粧板 柾目
きれいでしょ。
写真下 ― 表面からツブツブとヤニが噴き出してくる様子
どの材もということでもない。
木によりヤニ気の多いものと少ないものがある
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米栂 ベイツガ (ベイトガ) |
カナダ・アメリカ産の白木。
内装材にも構造材にもオールラウンドに用いられます。
ペンキののりがいいので着色塗装下地として良い材種です。
写真 ― 柾目の額縁
栂を化粧材として用いる場合の
小さな欠点であるカスレが、中央下にある
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スプルス (スプルース)
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カナダ・アメリカ産の白木。
白木なので中級の和室造作材に使用することが多い。 |
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米ヒバ ベイヒバ |
日本の桧より少し黄味がかっています。桧の代わりに用います。
日本の桧とは少し違いますが、独特の香りがあります。
大径木があるので、中上級の和室の造作材(鴨居・回縁等)に用います。
写真上 ― 板目
写真下 ― 柾目
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米桧 ベイヒ |
米ヒバと同じような使われ方。
色は、白っぽい。
以前は、この材種の方が、知られていたが、
近頃は米ヒバの方が良く流通しているように思う。
写真上 ― 板目
写真下 ― 柾目。全く同じ木片です。新に削り直したもの[上]
と比べ色がやけてるのがわかります。
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台桧 タイヒ |
台湾産の桧
日本で桧の大径木がなくなり(とても手が出せない高級品になり)
その代用樹種として高級和室造作材に用いられていた。
また、神社仏閣などにも広く用いられた。
近頃は、台湾でも大径木がなくなりかけ、
伐採が厳しく規制されてるようで、ほとんど輸入されなくなっている。 |
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米杉 ベイスギ |
北米産の杉。赤黒い木で、柔らかく加工性も良い。
割にすぐ黒く変色します。
北米の住宅では、ウッドシングルと呼ばれる屋根材は広く用いられるほど、
耐候性に優れています。
雨の多い日本で、屋根に使うのはどうかと思いますが、
ウッドデッキなどの外部の使用には、
最もコストパフォーマンスの高い素材だと思います。 |
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アユーズ |
最近出てきた樹種。木目はラワンのような感じだが色は黄白色。
やわらかく加工性が良いので、額縁等内装化粧材として用います。
日本は東南アジアの木を輸入しています。
そして、それらが枯渇しかけると、
代用樹種として新たな樹種の木が伐採される。
日本の商社マンは、勤勉にも、
また使えそうな樹種の木を探しに森へと入っていくのでしょう。
ラワン・台桧・白ラワン・メルサワ等、
いつのまにか、名前を聞かなくなってしまった木が多い。
材木屋として、木の名前が交代するたびに
「自然破壊」という言葉が頭をもたげます。
アユーズもまた用材として
代わり交代に消えて行く樹種の一つとなるのでしょうか。ある大工さんが一言。
でも、木の種類が変わるたんび、
だんだん木から草に近づいてるような気がするんや。 |

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洋ザクラ |
ラワンのような赤みのある色。
だが、木目もあるような感じで、見た目にも密実に見える。
堅くて重い。敷居等堅さが必要な所に用います。
和の建築では、
色が合わないので、白木の敷居の、敷居すべりの部分に、
この木を埋木したりしても用います
(合成樹脂の敷居すべりがほとんどです) |
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アガチス |
見た目、洋ザクラに似た感じだが、やわらかく加工性が良い。
地が赤いので、
上手に塗装を施すと中級材なのに、相当高級感が出ます。 |
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ケンパス |
南洋の堅木
集成材にされて、床用材として市販されていることが多い。
湖魚民宿吉平さんのホールの床に使用しました。 |
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梅・桜 |
私は茨城県つくば市**小学校5年の**です。HPを見て
「・・・そこで質問です。茨城県の木は「梅」ですけど、
「梅」の特徴について教えていただけないでしょうか。」
という、かわいい質問に答えてみます。元々、このページは、建築用材としての木に関して書いています。
梅に対しては、私は門外漢、でも書いてみます。「桜切るバカ、梅切らぬバカ」 近所の庭木屋さんの言葉。
それぞれの木の剪定強さに関する言い回しなのでしょう。
庭木の梅のゴツゴツ感も、
梅のそんな性質を知った庭師と梅との合作なのでしょう。梅といえば、尾形光琳の「紅白梅屏風」、
箱根のMOA美術館に展示されています。
「グラフィックデザイン」という言葉より昔からある、
日本の素晴らしいグラフィカルなデザインに感動します。また、このHPのでも名前を借りている、本家「徒然草」139段は
こんな文章です。
家にありたき木は、松・桜。松は五葉もよし。
花は一重なる、よし。
八重桜は、奈良の都にのみありけるを、
このごろぞ、世に多くなり侍るなる。
吉野の花、左近の桜、みな一重にてこそあれ。
八重桜は異様のものなり。
いとこちたくねぢけたり。植ゑずともありなん。
遅桜、またすさまじ。虫のつきたるもむつかし。
梅は白き、薄紅梅。
一重なるが疾く咲きたるも、
重なりたる紅梅の匂ひめでたきも、みなおかし。
遅き梅は、桜に咲き合ひて、覚え劣り、
けおされて、枝にしぼみつきたる、心うし。・ ・ ・ ・
梅と桜は、古来から常に対比されるようです。
私の地元マキノ町には、
財団法人日本さくらの会から「日本のさくら名所百選」にえらばれた
海津大崎の桜並木があります。
延長約4km、約600本のソメイヨシノの桜並木の誕生は、
それまでは岬を廻る道のなかった海津大崎に、
昭和11年(1936年)6月に大崎トンネルが完成したのを記念して、
マキノ町の前身である海津村が植樹したもので
その端緒は、
その工事に携わった一作業員の
自費で購入した若木を沿道に植えたことからだ、ということです。
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